KANKERI
ゲームが始まってから、アヤカは携帯や腕時計を確認したが、どうも動いていないようだった。
 壊れたのだろうか。それとも、
 あの世に時間なんてないのだろうか。
 アヤカは、信じ始めていた。あの電話から聞こえたニュースで、自分の死が伝えられていたことが本当ではないかと。

「いた!」
 アヤカとシホは、驚いた。
 荒井に見つかったか?
 二人は、恐る恐る後ろを向いた。
 そこには、鬼の荒井ではなく、清水だった。
「し、清水くん…」
「…どうしたの?驚いた顔して?」
「驚くわよ!大きな声ださないでよ!」
「あぁ、ごめん。」
 清水は怒られて少し落ち込んだ。隠れていた三人が一つの場所に揃った。

「荒井って奴、どうかしてるよ。あんなに怒ってたのに、さっき隠れてみてたら、アイツ…缶をじーっと見ながら、笑ってた。」
 清水からみた荒井は、気味が悪かった。
「鬼は…本気みたいだな。気をつけてな。じゃあ。」
 清水は立ち去ろうとした。そのときだった!
 今まで清水が来てから一言も話さなかったシホが急に立ち上がり、缶の方へと走り出した!

「沖野さん!」
 間一髪で、シホの腕をアヤカは掴んだ。
「離して下さい!」
 シホは、必死に抵抗し、アヤカの手を振りほどいた。
 その声に気付いた清水が、走って戻ってきた。
 シホはすでに飛び出していた。荒井にはまだ気付かれていないが。
「おぃ!やめろ!」
 アヤカは、シホを連れ戻す為に飛び出そうとしたが、清水が止めた。
「いや、離して!!」
「なに言ってんだよ?!今出たら君だって!」
「だって!だって…」
 アヤカは、その場で泣き崩れた。
 シホの姿は、もうすでに見えなかった。
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