KANKERI
時間だけが、ただ過ぎていった。
 時計の針は、すでに午後四時を回っていた。残り、十七分。
「俺に、良い考えがあるんだ。」
 少し肩を落とした清水がアヤカに一つの提案をした。
 それを聞いたアヤカは発狂した。
「そんなのダメ!ダメだよ!」
 アヤカの目に涙が大量にたまり、溢れてくる。
「俺は! …、俺は、親父を殺したんだ。」
「違う!あれは、事故でしょ?!」
 清水は、静かに涙をこぼした。
「しっかりして!清水くん。ダメだよ!」
 アヤカは泣きながら、清水の体をしっかりと押さえていた。
「お願いだから…」
 アヤカはどうしてもいやだった。
「もう、終わらせたいんだ。あんな親父、もう見たくないんだ。解ってくれよ。」
 アヤカの手が離れた。
「時間がないんだ。このままなら二人とも消えることになる。俺は、生き返っても犯罪者として生きていかなければならない。そんなんで、母さんや妹を幸せには出来ない。でも、あんなになってしまった父を、家族のもとに行かせる訳にはいかないんだ。」
 アヤカは、泣いていた。
 聞こえてはいたが、うまく整理が出来なかった。
「俺が、先に飛び出すから、戸田さんは、うしろから俺の背中に隠れて走るんだ。親父が俺の名前を呼んで缶を押さえたら、俺はあのときみたいにまた、親父の体を突き飛ばす。そこで、戸田さんが缶を蹴るんだ。いいね?」
 小さく頷いたアヤカに、清水は言った。
「ありがとう。…ユカさんに、必ず伝えるんだよ。」
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