忘れないで。
崩壊
冬が訪れた―――
珍しく喧嘩もしていなかった。
それが嵐の訪れだと
何も気が付かなかった。
「さみぃ~」
晃は自分のコートに顔を埋めていた。
『寒すぎる……』
私も自分のコートに顔を埋めて
足を進めていた。
今日は久しぶりのデートで
映画を見に行った。
「てかてか見てこれ!」
そう言って晃は指を差した。
『やばぁ~』
目の前には夕焼け空で
赤くて綺麗に染められた
景色が広がっていた。
2人で写真を撮りながら
久しぶりの幸せを感じた。
これが最後のデートになる事も
知らずに……