僕等の軌跡
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約束通り中川先生は夕方、塾に来てくれた。
「…で、何を教えてほしいんですか?」
「えっと…理科なんですけど、これ。」
先生が来るまでにいくつか問題を解いて、分からないところに印をつけておいた。
「えーっ、もぅ相原さぁーん…。これこないだ教えたんだけど。」
「えへ…笑。ごめんなさいっ。」
勉強の時はちゃんと話聞いてるつもりなんだけどなぁ。
やっぱり好きなんだもん…。
「ありがとうございました。」
「お…丁度そろそろ時間だ。送ろうか?」
…久しぶりに…1人で帰っても大丈夫かな?
「大丈夫…帰れると思います。」
「そうか。じゃあ気をつけてなっ。」
そういって先生とは別れた。
"あいつ"がいるとも思わずに…。
「ねぇねぇ、久しぶりに1人で帰ってるんだね。」
歩き始めてすぐ、前から男がきた。
聞いた事のある声がした。
「なんか最近ずっとスーツ着た男いたよな。彼氏…?」
「ちっ…違います!!」
"あいつだ"そう脳が認識した。
急に怖くなった。
ストーカー男。
ばっと後ろを振り返って走りだした。
"あいつ"は少し走りかけたけど、すぐに人の多い通りがあったからか、引き返していった。
だけど手の震えが止まらなくて、もうとっくに帰ったであろう先生の姿を必死に探してた。
すると少し前の方に中川先生の姿があった。
「…んせっ。待って下さい!中川先生!!」
必死で先生を呼んだ。
「…相原さん!?」
びっくりしてキョロキョロする先生。
「…こ…こわくて…。」
本当の事は言わなかった。
ただ怖いとだけ言った。
あまり心配かけたくなかったから。
「やっぱり怖いんですか?初めから送って下さいって言えばいいのに…笑。」
なんて言いながらも先生は、家まで送ってくれる事にしてくれた。
優しいね…。
「あ…オリオン座。今日、すごく綺麗じゃないですか?」
空を見上げると、いつにも増して星が綺麗だった。
オリオン座はすぐにわかった。
「あ、本当。でもあれ…もうすぐ春だし見えなくなるよな。」