僕等の軌跡
私は自己採点の結果を中川先生に話した。
「えっ自己採点しちゃった!?俺あんまりそういう知識ないからなぁ…。なんともいえない。でも…。」
中川先生も、高校も大学も第1志望にはいけなかったんだって。
でも…それでも今、納得のいく生活ができてる。
自分が勉強できない子だった分、そんな経験ができたから今ここでこの仕事ができてる。
塾ってできる先生ばっかだから、そうじゃなくてできない子の気持ち分かる人も必要だって思えたから。
だから入試が全てじゃないんだよって…。
「あ、先生。私傘持ってきてないです。」
「本当、雨ふってるな。ま…これでいけるくない?」
中川先生がもってるのは、1本の黒い傘。
「えっ、だから先生私、傘持ってないんで…。」
「いや、これ大きいし。2人いけるくない?」
1つの傘に2人ではいるの?
いやいや…待って先生!!
いつもみたくその辺にある忘れ物の傘、貸して下さいよ。
「ほら…行くよ。」
「え、あ、待って下さい。」
「そっち側は車危ないから、こっち歩きな。」
やっぱ先生ずるいよ。
もう分からない…。
先生はただ私が借りた傘を、持って帰るのが面倒だからした事かもしれない。
でも期待しちゃうような事しないでよ…。
切なくてどうする事もできなくて、中川先生を想う涙がやまなかった。
「こんにちは。…あっ、中川先生。」
「あ、相原さん。もう大丈夫なんだ?」
大…丈夫??えっ私…?何が!!?
「いや、もういいよ。俺、まだ落ち込んでるんじゃぁ…って心配したのに。ってか今日の卒業会…まだ後予定まで1時間あるけど?」
心配…してくれてたんだ。