僕等の軌跡

「とりあえずじゃあ、絢哉。相原さん送っていってみて。」

重い足どり。
悪いのは全部自分…そんなの分かってる。
でもなんでか涙が止まらなかった。
結局先生はお母さんに、事情全部説明してくれて…。
でもお母さんは信じてはくれなかった。

次の日の卒業式、私は家出の覚悟を決めて大荷物を持って行く。
帰り道、行くあてをどうしようかと思っていたら、陽菜(吉村陽菜)((よしむらひな))に会った。
陽奈には学校でも塾でもお世話になった…。

「あ…陽菜ちゃん。」
「美佳ちゃんなんか、すごい荷物。」
「あ、これ?家出なんだー。今日から。」
「えっ??」

なんだかんだで行くあてのない私を、引き取ってくれた吉村家。

陽菜にゆっくり話を聞いてもらううちに、不安がつのっていった。

「先生…大丈夫かな。会いたい。」
「電話…知ってるんでしょ?かけてみたら?」
「…。」

あの時だからって教えてくれた番号。
きっと…使っちゃいけない。
でも駄目もとで思い切ってかけてみた。


「「ただいま…。…ピーっとなりましたら…。ピー。」」
「「あ、えと…相原です!!昨日はごめんなさい。電話も、ごめんなさい。大丈夫なら…連絡ほしいです。では。」」

結局留守番電話に伝言を残しておいた。
しーんと沈んだ時間。
そんな中、陽菜が口を開いた。

「あたしね…。あたし、野村稜太(のむらりょうた)先生の事…。好きなんだ。」
「ふーん…。…えぇ??!野村先生!?あの社会の!??す…好き??」
「うん。美佳ちゃんが、絢哉好きになったくらいから。」

嬉しくて涙がでた。
同じ気持ちを持った人が、こんなにもすぐ側にいたなんて。
もちろん陽菜には見せないように。

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