僕等の軌跡
え…私のうける高校?
私、中川先生に言ってないよ?
それに朝の応援って、入試当日、先生達が"頑張れ"って応援に来てくれるあれ?
「中川先生、どうして私の受ける高校…?」
「どうしてって、気になる子の情報は調べるし。」
"気になる子"なんでかちょっと嬉しかった。
まぁでもあれからほぼ毎日のように勉強教えてくれてるもんね。
そりゃ成果気になるよね。
「ねぇ美佳ちゃん!絢哉!!どうしよう。あたし明日の時計ないよー…。」
今にも泣きそうな顔できた、この子は福井桃花(ふくいももか)。
学校は違うけどそれなりに仲良し。
「時計…?あ!どうしよう、私もないっ。」
ふと私も思い出した。
そう、私立入試ははっきりしてないが、公立入試では時計は外される。
時計を持っていかないと時刻が分からなくなるのだ…。
「んー…。お家の人のとか借りれないんですか?それか買うとか…。」
「あたしお母さんの借りれるかも!絢哉ナイス☆」
さっきまでとても不安だった顔が、一気に元気になって桃花は帰っていった。
先生はやれやれと小さくため息をつき、視線が私に…。
「で…、相原さんは?」
「今日お金ないし、親に借りるのは…。」
最後までは言えず、私達は口をつぐんだ。
すると先生は優しく笑って何も聞かずに…。
「ほら。貸す…俺の。」
と、自分の着けてた腕時計を外し、私に差し出す。
「いやいや!どうみても高そうだし、てか先生も使うんじゃ…。」
「いいよ、いいよ。時計ならもう1つ家にあるし。」
「…ありがとうございます。」
ぱっと時計を見ると23時5分。
「沢山先生、今日僕相原さん送って行きましょうか?」
えっ!?えぇ!!?
そんなのありなの!?
「あーっ、頼む。」
沢山先生は仕事から手が離せないらしく、今日は中川先生に送ってもらう事に…。
どきんっ…。
また少し…緊張してるの。
心が私の知らないリズムを奏でだすの。