それでも君を
『今日でお別れよ』
すごく、冷たい目だった
恐かった訳じゃないのに
体がガタガタ震えた
『空音、さよなら』
『…なんで置いていくの?』
真っ赤なコート
真っ黒な高いヒール
振り向いたお母さんの顔は
蒼白と言っていいほど
真っ白で柔らかな笑顔。
『あたし、恋したの。』
哀しかった
痛かった
辛かった
悔しかった
あの日が、初めてだった。
すごく嫌われてたけど、
12年間一緒に暮らしてた
虐待擬いの事をされてたけど
それでもあたしのお母さんだった
なのにあの日初めて
お母さんの幸せそうな顔を見た
この先どうなるのかもわからず
ほぼ無意識の状態で
お母さんに言われた通り
目の前のインターホンを押した