EGOISTE
10分程で鬼頭と楠はトイレから戻ってきた。
「大丈夫?」
水月が鬼頭の頭に手をやる。
「平気。ちょっと酔っただけだから」
「それならいいけど」
二人は前を歩き出す。
「楠、ホントにあいつ大丈夫なのか?」
「うん。吐いたら楽になったみたい」
俺の隣を歩いていた楠は、ちょっとかげりのある表情で下を向いた。
「雅、妊娠―――してたりして……?」
「―――は?」
俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「って、まさかねぇ。神代先生に限って……。何かしっかりしてそうだし。ただの車酔いだよねぇ?」
楠は自分で言った言葉を無理やり否定した。
「ばぁか、水月に限って、そんなことあるか。あいつは俺と違って真面目なんだよ」
俺も否定した。
「俺と違って、って先生不真面目なんですか?ってか、不真面目って……」
楠が白い目で俺を見る。
「……………」
言った後で後悔した。
まぁ実際のところあの二人がどうなのか、なんて知らないし、想像したこともねぇけど。
水月に限って―――
俺はあいつに絶対的な信頼がある。