EGOISTE
俺のマンションから楠の家まで車で15分ぐらいのところにある。
道がすいてたこともあって10分足らずで到着した。
「先生、今日は色々ありがとうございました。楽しかった。話も聞いてくれてありがとね」
思ったよりしっかりした挨拶で、楠は律儀に頭を下げ車を降りた。
「おー、また何かあれば話ぐらい聞くぞ?」
楠はちょっと苦笑いを漏らして、家に入っていこうとした瞬間。
バン!
楠の家の扉が勢い良く開いて、
「乃亜!」
中から楠 明良が顔を出した。
半年ぶりに見た楠 明良は、なるほど高校生のときより幾分か男らしくなっていた。
こりゃもてるな。
それでもって本人も自覚してそうだったから、たちが悪い。
何で分かるかって?俺と同じ匂いがしたからだよ。
「乃亜!連絡も寄越さないでどこ行ってたんだよ!」
明良は乃亜を見るなり、そう怒鳴った。
「どこってどこでもいいでしょ」
冷たく言いのける乃亜。
その場に不穏な空気が立ち込める。
明良はふいに顔を上げると、車に乗ったままの俺を見て目を開いた。