EGOISTE
俺は椅子を引いて女に近づくと、そいつの顎を指で軽く持ち上げた。
「ふぅん、じゃ、相手は誰でもいいんだ?じゃ、俺にしとけよ。俺は上手いよ?」
女の顔を覗き込むようにして低く言うと、女は顔を真っ赤にしてたじろいだ。
「な……何言って…!」
ガラ
ふいに扉を開ける音がして一同が出入り口に顔を向ける。
入り口に突っ立っていたのは
鬼頭だった。
鬼頭は表情を変えずにすたすたと俺のところに来ると、
「エロ保健医」
とぼそりと呟いて、奥のベッドに向かって言った。
男の方がびっくりしたように目を開き、鬼頭を振り返っている。
カーテンを閉めるシャッという音がまるで俺と鬼頭との間を遮断するかのような音に聞こえた。
俺は女の顎から手を離した。
「とにかく、お前らもっと考えて行動しろ。ちゃんとセックスの意味を理解しろ」
「……意味なんてないよ」
まだ女は口ごたえする。
「じゃ、先生はちゃんと意味を感じてしてるんですか?」
ここで初めて男が口を開いた。
今までだんまりだったのに、一言発した言葉はずしりと重かった。
「俺は愛のねぇセックスはしねぇよ」
今は……と続けたかったけど、言わなかった。