EGOISTE
「悪りい……」
俺は額に手をあて、思わず肩を落とした。
「……ううん」
鬼頭が弱々しく頭を横に振る。
「……どうして…知られたくないって思うんだ?」
俺は聞いてみた。
だって、子供ができてりゃ大問題だろ?話し合ってどうしていくべきか、今はそれが必要だ。
「怖い……」
鬼頭は目を伏せて、小声で言った。
殆ど消えてしまいそうな本当に小さな声。
急に鬼頭が一回りも二回りも小さくなった気がする。
何が怖いんだ?
そう問い返そうと思ってやめた。
「あいつが……水月が逃げるとでも?」
コクン…小さく鬼頭は頷いた。
「あいつはそんな男じゃねぇよ。お前が一番知ってるだろ?」
俺だって知ってる。
鬼頭にガキが出来たからって、そんなことで逃げ出すような男じゃないことを。
あいつは鬼頭の為なら何でも捨てられる。
そんな男だ。
それほど鬼頭を
愛している。