EGOISTE
俺と鬼頭、二人の影がまっすぐ伸びている。
駐車場に着くまで、その影はひたすら無言で、だけど離れることなく一定の距離を守っていた。
車に入ると、外駐車だったせいか熱気がこもった車内はむっと暑かった。
背中や額にすぐに汗の粒が浮かぶ。
慌ててエアコンをつける傍らで鬼頭が、
「先生って面食い」
と言って俺を見た。
「そっか……?あれも良く分からん女だったな」
俺が呟くと、鬼頭は大きな目を細めて、
「歌南さんに少し似てた」と呟いた。
…………鋭いな。
確かに、あいつと付き合ったのはほんの気まぐれだ。
あいつが俺に言い寄ってくるその姿勢は、俺が昔歌南を口説いていたときのそれだった。
色々と……重ねていたのかもしれないな。
「ま、それより、妊娠してなくて良かったな。お前のは多分夏バテだ。栄養が足りないからホルモンバランスが崩れて生理も遅れたんだよ、きっと」
「……うん」
鬼頭は俯くと、お腹の辺りをちょっとさすった。
「何だ?妊娠してなかったってのに、顔色が晴れないな」
「良かったって思うよ。妊娠してなくて。……でも、少し残念な気がするんだ」
「残念?」