EGOISTE
マンションに帰って、鬼頭の様子を見に部屋を覗くと、鬼頭は心地良さそうに寝息を立ててぐっすり眠っていた。
緊張の糸が切れてしまったのだろう。
疲れを伴った体に一番必要なのは、どうやら睡眠だったらしい。
俺は部屋を出ると、リビングのソファに脚を投げ出し横になった。
本来なら鬼頭の隣で、一緒に眠るのに…
そうしなかったのは、俺があいつに気があるとか、あいつを生徒以上に見てるとか、そんな理由じゃない。
もうこれ以上……
水月の悲しむ顔を見たくなかったから。
理由は至極簡単なことだ。
でも……
「うまくいかねぇな」
ぽつりと漏らし、両手を頭の下に入れる。
一向に治まらない胃の痛みを抱えながら、俺は狭いソファの上で目を閉じた。