EGOISTE
「……ちげぇよ。ちょっとあれだ…夏バテ?」
「ふーん…先生でもそんなんあるの?いつっも鬱陶しいぐらい元気なのに」
いつも通り、鬱陶しいぐらい小憎らしい鬼頭だ。
昨日の気弱になっていた鬼頭は見る影もない。
「……悪りい…起こしちまった?」
「ううん。トイレに起きて来たの。でももう起きるよ」
「ちょうど良かった。じゃぁ着替えて準備したら出かけるぞ」
「出かけるってどこへ?」
鬼頭が訝しんだ。
「水月ンとこ」
俺は振り返らずに短く答えた。
「は?何で?」
そう返ってくると思った。
俺は振り返ると、鬼頭の顔を見下ろした。
別に睨んでるつもりもないけど、鬼頭がひるんだように一歩後退した。
俺は俺に出来る精一杯の優しい声音で言った。
「一度あいつとちゃんと話し合う必要がある。お前だってあいつに言いたいこととか聞きたいことあるだろ?
今日一日ゆっくり話してこいよ」
「話すって何を…」と言いかけて、鬼頭は顔を険しくさせた。
「先生、昨日のこと水月に言ったの?」
言おうかどうか迷った。
正直に答えたら鬼頭は「行かない」と言い出すかもしれなかったから。
でも……
「……ああ」
俺は正直に答えていた。