EGOISTE
驚くことに、鬼頭は俺の言葉に一つも文句を言わず俺の言う通り大人しく準備して従った。
「ちょっと、強引だったか?」
「何言ってんの。今更」
そうそっけなく答えた鬼頭はいつものこいつで、
車に入るなり、こいつはいつもどおり窓の外を眺めていた。
水月の家には10分と経たず着いた。
早朝だったからか、道がすいてたのもある。
水月と言い合ったのは昨日の夜。
まだそれほど時間経ってない。
珍しく緊張した面持ちでインターホンを押す。
まだ寝てるかな?
思えば連絡一つ寄越さず押しかけたのは、ちょっと迷惑かもしれない。
『……はい』
インターホンに出たのは、水月だった。
『どちら様ですか?』
声に張りがない。インターホンを通しても分かる、その声は疲れが滲み出ていた。
「……あ、お」れと言い終わらないうちに、隣で鬼頭が
「水月。あたし」
と答えた。
中からバタバタと足音がして、忙しなく鍵を開ける音がした。
ガチャ
「……雅……とまこ?」
扉を開けて、水月は鬼頭を見、そして俺をゆっくりと見た。