EGOISTE

水月はTシャツに、ジャージ姿だった。


一応寝る格好にはなっていたけど、その顔に眠った痕跡はなかった。


顔色が悪い。


眠れなかったんだな……


「……先生が連れてきてくれたの。水月と話をしろって」


鬼頭が両方の手をポケットに突っ込むとぶっきらぼうに言った。


おい。その姿勢は話し合いの姿勢じゃないぞ…


そう思ったけど突っ込みはしなかった。


「水月~?誰?」


水月の後ろで歌南が欠伸をしながら、ゆっくりと歩いてくる。


俺と鬼頭を目に入れると、


「まこ!それに雅ちゃんも。どうしたのこんな早くから」とにっこり笑った。


黒いキャミソール一枚に、細身のジーンズ姿といういでたちだ。


こっちも寝起き、には見えなかった。


しっかりと化粧を施してある。


「…話し合い……。じゃぁ外で。うちには姉さんがいるから……」


ちょっと待ってて、と言って水月は廊下に引き返そうとした。


「待てよ」


その手を俺が引きとめた。


水月が怪訝な顔をして振り返った。


同じように鬼頭も俺を見上げてる。


「外でなんか話せる内容じゃねぇだろ。」


「でも……」


水月は不思議そうに首を傾けている歌南を振り返る。




俺は鬼頭の背中を押した。



そして歌南の方を見ると、




「お前はこっちにこいよ」と言い、歌南の腕を乱暴に引っ張った。









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