EGOISTE
「ちょっとなぁに?」
歌南は状況が読めないのか、不機嫌そうに俺を見上げてくる。
「トレードだ。
歌南は俺が預かるから、お前らゆっくり話し合いしろ」
「え……でも…」
水月は不安そうに俺と歌南を交互に見やる。
「俺なら大丈夫だ。こいつ一日借りるぜ。じゃな」
言葉も少なめに無理やり扉を閉めると、俺は歌南の手首を掴んで歩き出した。
「ちょっと!何なのよ!!」
歌南は俺の後ろで喚いている。
「うるせ。お前は黙ってついてこい」
何とか歌南を俺の車に乗せると、俺は車を発車させた。
15分ほど走って、俺は路地裏の目立たない場所に車を停車させた。
「いい加減説明してよね。こんなことして許されると思ってるの?」
歌南は腕を組んで、低く言った。
俺はハンドルに腕を置いて、その上に顎を乗せると、ちょっと笑いながら歌南を見た。
「お前は俺にもっと酷いことしたんだぜ?それは許されるわけ?」