EGOISTE
「お前やっぱムカツクわ」
俺はそう無表情に言うと、シートを倒した。
両腕を上げて頭の下に組み敷く。
「何よ。ちょっと、あたしをこのままにして寝る気?」
歌南は不機嫌だった顔に更に不服という感情をプラスして俺を見下ろした。
俺はそんな不機嫌な歌南の顔なんて気にせず、メガネを外すと目を閉じた。
「やだったら、どっか行けよ。得意だろ?
俺が眠ってる間に消えるのは」
目を閉じていたから歌南がどんな表情をしているのか分からない。
別に知りたいとも思わない。
だけど、こいつが小さく息を呑む気配を感じたのは確かだ。
少しの沈黙が降りてきて、場内がしんと静まり返る。
エンジンを掛けっぱなしにしてあるので、エアコンの音だけが響く。
そんな中歌南が小さく問いかけてきた。
「まだ……怒ってるの?」