EGOISTE
「今日……」
俺はちらりと歌南を振り返った。
歌南はどこでそんな仕草を身に着けてきたのか、ちょっと大げさに肩をすくめてみせた。
「わり…今日はちょっと……」
『そう…ごめんなさい。急に言い出して。またの機会にするわ』
「……ち、千夏……」
プツ…ツーツー……
電話はそっけなく切れた。
まるで千夏の気持ちを代弁しているかのようだった。
「くそっ!」
なんてタイミングが悪いんだ!!
俺は運の悪さを呪った。
八つ当たりでガンっとハンドルに腕を打ちつける。
「彼女?」
歌南が興味深そうな顔で身を乗り出してきた。
「お前には関係ねぇだろ」
歌南にも八つ当たりして、俺は睨んだ。
「まぁ確かにそうね。あたしには関係のないことだわ」
ホントに興味がなさそうに歌南は姿勢を正した。
ホント……俺、何やってんだろ…
ごろりと再び背中をシートに預けると、フロンガラスの向こう側でビルとビルの間から歩道橋が見えた。
何でそこに目がいったのかは謎だったけど、そのとき何か思うものがあったとしか言いようがない。
ぼんやりと歩道橋を見て、俺は目を開いた。