EGOISTE
千夏は眉を寄せて、哀しげな表情で俺を見下ろしている。
千夏がどうしてここに…?
そんな疑問が浮かんだが、そんな考えはすぐに吹き飛んだ。
千夏の背後に若い男女が四人ほど、団体で彼女に話しかけている。
千夏はそれに何か答えていた。
知り合い―――?
団体はにこやかに笑いながら、通り過ぎていった。
千夏は最後に俺をちらりと見ると、すっと振り返ってその団体の群の後を追っていった。
「待って!千夏!!ちなっ―――」
最後の一文字は言葉にならなかった。
――――ズキン!!!
今までにない激しい胃の痛みが俺を襲う。
「―――っく!!」
俺は声にならない叫び声をあげてその場にしゃがみこんだ。
どうして!
どうしてこんなときにっ!!
「まこ!!」
歌南の叫び声が遠くで聞こえる。
俺はお前にそう呼ばれるのが心地よかった。
呼ばれるたびに幸せだった。
でも今はちっとも嬉しくない―――