EGOISTE
「まこ!」
歌南の緊迫した声がすぐ近くで聞こえて、あいつの腕が俺の肩に伸びてくる。
「触るな!」
乱暴に手を払って俺は怒鳴った。
歌南はびっくりしたように手を引っ込める。
「触るな……」
弱々しくもう一度言うと、俺はよろけるように立ち上がった。
「まこ……どうしたのよ。具合でも悪いの?」
「……お前にゃ関係ねぇ」
ぶっきらぼうに言うと、俺はビルの壁伝いに手をついてよろよろと歩き出した。
「関係ないって…あんた酷い顔色よ?どこか悪いの?」
歌南が俺の後を遠慮がちについてきた。
「ちょっと……疲れてるだけだ」
俺は激しい胃の痛みに顔を歪ませながら何とか言った。
歌南に、知られたくない。
原因がこいつにもあることを―――知られたくなかった。