EGOISTE

何とか車に戻ると、俺はシートにぐったりと横になった。


歌南も続くように車内に乗り込んだ。


深呼吸して目を閉じると、幾分か気持ちが楽になった。


「……やってらんね…」


思わず弱音がこぼれる。





ホントに………やってられるかよ……





目を閉じても瞼に焼き付いている。


あの哀しそうな目……


千夏のあんな顔を見たのは初めてだ……



そりゃいつも自信に溢れて勝気な性格じゃない。


どっちかって言うと自信がなくて、気弱そうにしているけど。


それが護ってあげたいっていう保護欲に繋がっていた。


でも……


今の俺はあいつを護れるだけの器がない―――



あいつを傷つけたのは紛れもない―――俺自身なんだから……





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