EGOISTE
いつの間に眠っていたのだろう。
薄れ行く痛みに、エアコンの音が心地よく…うつらうつらしていた。
バン……
小さく扉を閉める音が聞けえて、俺はふっと目を開けた。
さっきまで身近に感じていたエゴイストの香りが遠ざかっていく。
「……歌南?」
顔を横に向けると、助手席に歌南の姿はなかった。
「……またかよ……」
俺は盛大にため息を吐き出した。
今更歌南に去られることにダメージは受けない。
というか、ちょっと清々する。
これでやっと一人に…………
コンっ
運転席側の窓ガラスを軽く叩く音がして、俺は振り向いた。
歌南がにっこり微笑んで、顔を覗かせている。
「……何だよ。……今更…」
何だよ!!今更!
俺はもう一度今度は大声で怒鳴って、ハンドルにガンっと拳を打ちつけた。
今更……遅い。
何で5年前そうしてくれなかった?
何で俺を捨てた―――
何で今更戻ってきた―――