EGOISTE
たっぷり夜になって俺は歌南を連れ、水月のマンションに帰った。
「おかえり……ってうわっ」
扉を開けて水月は俺の顔を見るなり、顔をしかめた。
俺は不機嫌オーラを隠そうもせず、ムスッと突っ立っていたからだ。
水月は今朝来たときよりも服装がキチンとしてあったし、髪もちゃんとセットしてあった。
「今日一日姉さんのお守りありがとう」
「ちょっとお守りってどういうことよ!」
歌南がぷりぷり怒り出す。
姉弟喧嘩なら勝手にやっててくれ。
「鬼頭とは仲直りしたか?」
俺は気になっていたことを聞いた。
「あ…うん」
水月が幸せそうに顔をほころばす。
「良かったな」
「まこ。色々ありがとね」
水月が眉を寄せて、微妙な感じでちょっと笑った。
きっと俺と歌南の間にまた一悶着あったと悟ったようだ。
「いいよ。その代わり今度なんか奢れよ」
俺は水月のそんなぎこちない笑顔を見たかったわけじゃない。
こいつが笑うと、ホント俺が悩んでたことが吹っ飛ぶぐらいの威力があるんだ。
俺が悩んでいたことなんて小っちぇえことなんだなって気にさせられるから。
俺は水月の頭に手を置いて、髪をぐしゃぐしゃとまさぐった。
「ちょっ!やめてよ~」
口調は嫌がっていたけど、顔は笑ってる。
それでいい……
それでいいんだ。