EGOISTE
寛恕(かんじょ)
楠 乃亜の指定してきたカフェは幸いにもそこから離れていなかった。
カフェに到着して車を路上駐車させると、店の前で楠が手を振っていた。
歩み寄っていくと、
「ごめん、急に呼び出して」と楠はちょっと疲れたように笑った。
目の縁が赤い。
泣いてたな……
ってことは―――別れたか……
鬼頭も同じように思ったのか心配そうに楠を見て、その目を俺に向けてきた。
眉を寄せて、哀しそうな表情を浮かべている。
かけるべき言葉も見つからないまま、何となく俺は二人を中に促した。
「とりあえず中入ろうぜ」
俺の提案に二人は大人しく従った。
セルフサービス式のカフェで、先に注文して商品を受け取れるシステムだ。
「あたしアイスカフェオレ。雅は?」
「あたしはアイスティー。先生、財布」
レジカウンターの前で鬼頭は掌をこっちに向けた。
ったく、こいつわー……
と思いながらも大人しくポケットから長財布を取り出す。
俺の分のアイスコーヒーを注文して品物を受け取り、トレーに乗せてテーブルに落ち着く。
鬼頭が俺のために気を利かせて喫煙席を選んでくれた。
早速、と言わんばかりに俺はポケットからタバコのケースを取り出し一本火を点けた。
重苦しい話になるのは分かりきっていたので、タバコでも吸わないとやってられない。
一息吐き出すと同時に楠が重苦しい口を開いた。
「あたし……
明良とやり直してみる」