EGOISTE

びっくりして俺は目を開いた。


「なっ!」


何するんだよ!と言いたかったけど、言葉になったのは最初の一文字だった。


それほど俺は驚いていた。


助手席で鬼頭がクスリと笑みを漏らす。


18の小娘にからかわれた……と鬼頭の笑顔で気づいた。


「モテモテだね。先生」


「ガキにもててもうれしかねぇよ」


俺はブスリと答えて、車を発車させた。


ミラーで確認したが、楠は俺たちの姿が見えなくなるまで手を振っていた。


あいつは…あいつなりに気を遣ってるのだろう。




夜10時―――


朝と違って夜はそれなりに道が混みあっている。


おまけに衝突事故があったとかで、片側一車線規制になっていたので余計に道が混雑している。


強引に割り込んでくるマナーの悪い車に俺はクラクションを鳴らした。


「あっぶねぇな!気ぃつけろ」


と口の中で文句を垂れると、隣の席に座った鬼頭が眉間に皺を寄せて俺を見ていた。


「んだよ」


「苛々してるのは、歌南さんのせい?何かあったの?」


「俺ぁ運転するときいつもこんなだよ」


「嘘。いつもはもっとなだらかだよ」


鬼頭が俺の言葉を否定する。





鬼頭の―――言った通りだ……



俺はイラついている。





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