EGOISTE
「歌南じゃねぇよ」
何で言う気になったのか分からなかったけど、気付いたら口から出ていた。
「じゃぁ千夏さん?また喧嘩?ってか悪化??」
「…………悪化の方」
俺はブスリと答えた。
何でかなぁ。俺は今まで恋愛の相談なんてかっこ悪いこと、男にも女にも親にもしたことがないのに。
こいつといると何故か全部喋っちまう。
「……そう」
鬼頭は小さく頷いただけだ。
こいつはいつだって明確な答えを出してくれるわけでもないのに。
別に俺の方もこいつに答えを求めてるわけじゃねぇから、話はここで終わり。
……な筈だった。
「ねぇ」
鬼頭がふいに口を開いた。
「カンジョって言葉知ってる?」
「は?カンジョ?何だそれ…」
突然何を言い出すのやら。
まぁこいつが分けわからんのは今に始まったわけじゃないが。
「心が広くて思いやりがあることを言うんだよ」
「―――ああ…寛恕ね」
俺の頭の中でようやく漢字が当てはまった。
「過ちを咎めないで許すことも意味するよね」