EGOISTE

アウト


「前科者……って…え?」


それはつまり……


「浮気は事実。乃亜に話したことは嘘だったの。う・そ」


鬼頭の言葉に今更驚きはしない。


楠は半々で信じると言ったが、俺の中では9割5分信じられなかった。


限りなく黒に近い……言わばグレーゾーンだったわけで。


もちろんそんなこと楠には言えやしないが。


「何でお前が知ってんだよ」


やっぱりか、と言う感じで俺はちょっとメガネのブリッジを直した。


鬼頭はちょっとだけ肩を竦めると、


「乃亜の家に遊びに行ったとき、乃亜じゃない香水の香りが明良兄から香ってきたの。怪しいと思って、問い詰めたらあっさり白状した」


とまるで他人事のようにさらりと言った。


さっきの燃えるような怒りは、今はすっかりなりを潜めている。


問い詰めた……って、あっさり白状するようなやり方でこいつは楠 明良を追い込んだに違いない。


そういう周到なやつだ。


俺は今更ながら、こいつの行動に身震いを覚えた。


「……で?いつから?浮気相手とは長いの?」


本当なのか!?とは今更問わない。


こいつがそう言うのだから十中八九間違いないだろう。


「一ヶ月ぐらい前から」


「それじゃ、水族館に行ったときはやっぱ浮気中だったってわけだ」


「そゆうこと」


「……まぁ俺は所詮他人事だから何も言わないけど、お前からしたらどこからが浮気なわけ?」


これは人に寄って異なるが、俺の場合はやっぱセックスをしたら


完全アウトだな。








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