EGOISTE
「これは朝顔です。これならお手入れも簡単ですし、切り花よりずっと長持ちしますので、持ってきました」
高田さんは鉢をちょっと持ち上げてにこにこ笑う。
「先生が大事にしてらした薔薇は枯れちゃいましたけど、その代わりと言うか……」
俺は……高田さんのこうゆう小さな心遣いが結構好きだ。
千夏も似たところがある。
千夏……
結局―――
千夏とは昨日歩道橋で顔を合わせて以来電話をしていない。
掛けるのが怖かった。
言い訳も用意しないで電話を掛けたら、あっさり別れを告げられそうで………
怖かった。
「……っつ」
俺は胃の痛みを覚えて、腹を押さえた。
「大丈夫ですか?私急いでお薬もらってきますね」
鉢植えを持ったまま高田さんが奥へ行こうとする。
俺はそんな高田さんを呼び止めた。
「朝顔のっ!」
高田さんがこちらを振り返る。
「………朝顔の花言葉は何て言うんですか?」
高田さんはにっこり柔らかい笑みを浮かべて口を開いた。
「愛情の絆、結束―――などです。
朝顔は夏の花ですから。きっと長生きしますよ」
夏の花―――………
千夏………