EGOISTE

土曜日の夕方―――


俺は千夏の勤める大学病院の従業員出入り口で、喧嘩をしてから二度目の出待ちをしていた。


土曜日はどちらも午前中診察がある。


こういうとき同業者っていいな。


ある程度相手の行動が掴める。





何から話そう。どう説明しよう……


正直何一つ考えがまとまっていない。


でも、話さなきゃ。


このまま連絡も途切れて自然消滅なんて絶対に嫌だった。





そんなことを思いながら、壁に寄りかかっていると、


「お疲れ様です」


と声が上がり、女の団体が出てきた。


その中に千夏の姿を見つけると、俺はなりふり構わず彼女を呼び止めた。


「千夏!」


俺の声に、千夏がまるで固まったように身を強張らせ、顔だけをゆっくりと振り向かせた。


その顔に驚きと、哀しさ……ちょっとの怒りが見え隠れしている。


「……誠人。―――久しぶり」


千夏は強張った顔のまま小さく言葉を押し出した。





久シブリ





この言葉の裏に



俺は彼女の気持ちを読み取った。







何で俺は鈍感になれないんだろう。





何で分かってしまったんだろう。





何で―――







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