EGOISTE

「………千夏」


「あの人と……元カノと同じだったから変えたんでしょ?」


「…………」


何て答えればいいのか分からなかった。


俺はいつだって頭の中で計算して、より良い答えを算出する力に長けている。


少なくとも今まではそうだった。


でも、今。俺は答えるべき言葉を、どれだけ探しても不正解な気がして、とてもじゃないが口を開くことができなかった。


千夏はテーブルの上でぎゅっと握った拳に力を込めた。





「人に何を言われても我が道を行くあなたの生き方が好きだった。


何にも左右されずに、自分をしっかり持ったところが憧れでもあった」



ちょっと待て……


何で


何で過去形なんだよ!


そう聞き返したかったけど、言葉は出てこない。




好きな女を目の前に、その女から去られるのが怖くて俺は身動きが取れないでいる。


そう


それは紛れもない恐怖だったんだ。







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