EGOISTE
「でもあなたは今その人のことを意識してる……その人に影響されてる」
「いや。それは間違いだ。俺はあいつとの接点を絶ちたいと思ってるから……だから変えた」
ようやく出た言葉は思った以上に弱々しかった。
「あなたが忘れたいと願うほど!
あなたの中で彼女の存在がそれだけ大きなものになっているのよ。
誠人……
あなたの時間は止まってる。前の恋人から別れたときからずっと……」
千夏は震える声で言い切った。
隣の客たちが無遠慮にじろじろと見てくる。
あいつらにとって俺たちが揉めることは好都合らしい。
「見てんじゃねぇよ!」
乱暴に言い捨てて、そいつらを睨むと男たちは一瞬顔をしかめたが、そそくさと顔を逸らした。
「すっげ~怖くね?ヤクザかっての」
ヒソヒソと話し声が聞こえて我慢がならなかった。
立ち上がろうとした瞬間、
「誠人!」
と千夏の空気をも振るわせる声が響いた。