EGOISTE
千夏の姿が見えなくなるまで、俺は彼女の背中を見送っていた。
案外………
あっけないもんだな。
俺は千夏の全てを知ってるつもりだった。
どうすれば彼女が喜ぶのか、何をしたら彼女が怒るのかとか。
でも肝心の
彼女の弱いところを
俺は見つけられなかった。
最後の最後まで…………
ホント
俺は千夏の何を見てたんだろうな。
情けねぇ。
自嘲じみてちょっと笑うと、
TRRRR
ケータイがジーンズのポケットで振動した。
今は誰とも喋りたくなかった。
すべてが億劫だったんだ。
だけど俺はケータイを取り出して、何故か開けた。
着信:鬼頭 雅
となっていた―――