EGOISTE
鬼頭はたなびく髪を手で押さえながら俺をゆっくりと見てきた。
「別にいいんじゃない?そんなんでも。
女なんてなんでも器用にこなせる男より、多少不器用な方が好きなんだから」
ちょっと唇の端を持ち上げて、鬼頭はほんわかと笑った。
「願わくばそうであってほしいね」
俺もちょっとだけ笑って返すと、
「そろそろ中に入るか」と言い腰を上げた。
「あたしも。ここ暑いもんね」
とそんなことを言っているにも関わらず汗一つ流していない涼しい顔した鬼頭も立ち上がろうとした。
その瞬間
鬼頭の細いヒールが僅かに傾いた。
同時に鬼頭の体がぐらりと揺れる。
「わ!」
「ぉわっ!!」
咄嗟のことで俺は鬼頭を支えるように両腕を出した。
鬼頭の体がふわりと俺に被さってくる。
鬼頭の香りをより一層強く感じて
次の瞬間
――――
俺と鬼頭の唇がきれいに重なっていた。