EGOISTE
俺はごろりと横を向くと、鬼頭に背を向けた。
「ま、いいだろ?そんなところだ」
「ふぅん。ね、先生は今でもお姉さんのこと恨んでる?」
布の擦れる音がした。
鬼頭がこっちを向いたのが気配で分かる。
だけど俺は振り向かなかった。
「知らね」
一言だけ呟くと、俺は目を閉じた。
何故か即答ができなかった。
俺には今千夏がいるし、俺を捨てていった酷い女のことは今の今まで存在自体忘れていた。
あいつはいつもそうだ。昔から変わらない。
突然俺の目の前に現われて、いいだけ俺の心をかき乱していって、痕跡もなく綺麗に消える。
愛していた?恨んでいる?
分からない。
今はただ……
俺を捨てていった理由を、知りたい。