EGOISTE
俺はテーブルに歩み寄ると、あからさまに不機嫌そうに顔を歪めた。
歌南の纏ったエゴイストが鼻につく。
前は好きだった香りけど―――
今はただ不快にしか感じられない。
座った歌南を見下ろすと、こいつはちょっと色っぽく微笑んできた。
「やっぱり来た」
「すぐ帰る。悪いけど、俺はお前の我侭に付き合うほど暇じゃないんでね。今後から呼び出すなよ。」
無表情に言って背を向けようとした。
テーブルのスツールに腰掛けるつもりもなかった。
ただ本当に一言言ってやりたかっただけなんだ。
「もう俺を振り回さないでくれ。俺に関わらないでくれ」
用意していた言葉は
思った以上に簡単に口に出た。
思った以上に冷ややかで、冷酷とも呼べるものだった。
まるで自分の声じゃないかのように、冷たくて感情のない人形のようだった。
この喋り方は……
鬼頭のそれと良く似ていた。