EGOISTE

俺はテーブルに歩み寄ると、あからさまに不機嫌そうに顔を歪めた。


歌南の纏ったエゴイストが鼻につく。


前は好きだった香りけど―――





今はただ不快にしか感じられない。







座った歌南を見下ろすと、こいつはちょっと色っぽく微笑んできた。


「やっぱり来た」


「すぐ帰る。悪いけど、俺はお前の我侭に付き合うほど暇じゃないんでね。今後から呼び出すなよ。」


無表情に言って背を向けようとした。


テーブルのスツールに腰掛けるつもりもなかった。


ただ本当に一言言ってやりたかっただけなんだ。









「もう俺を振り回さないでくれ。俺に関わらないでくれ」









用意していた言葉は



思った以上に簡単に口に出た。


思った以上に冷ややかで、冷酷とも呼べるものだった。


まるで自分の声じゃないかのように、冷たくて感情のない人形のようだった。






この喋り方は……




鬼頭のそれと良く似ていた。






< 200 / 355 >

この作品をシェア

pagetop