EGOISTE
ショットガン
「別れたんでしょ?だったらあたしとやり直さない?」
歌南はまるで、「ちょっとそこまで付き合ってよ」と言うような軽い口調で言ってきた。
外界の音が遮られる。
その声だけがまるで別の音として認識された。
要するに
理解できないってことだ。
「…バカか、お前。どの口が言う?」
歌南はきょとんとしてまばたきをした。
「5年前捨てて行った男を、まるで落し物を拾うかのように、簡単に寄り戻そうって言う神経が俺には理解できん。
大体お前旦那がいるだろ?
俺は不倫なんてごめんだね」
お前はよく知ってるだろ?
男を作って出て行った俺の母親のことを。
家庭のある女に手を出さないし、それでもモーションかけて来る女は持っての他。
歌南はちょっと考えるように、目を伏せてテーブルの上で手を組んだ。
「そう言うわけで、お前は絶対ない」
今度こそ本当に帰ろう…そう思ったとき
「別れる―――って言ったら?」
歌南の喋り方は独特のリズムがあって。
まるで波のように、それでいて軽快なものだ。
俺はそのリズムが好きだった。
今はただムカツクだけだけど。
でも、今はそのリズムを体で感じ取れない。
ただ単調の言葉の羅列を聞いているだけだ。
「―――は?」
俺はそう聞き返していた。