EGOISTE
何で気付かなかった……?
歌南の左手薬指に指輪がないことを。
そして何でこのタイミングで気付く?俺……
「……別れるって…離婚?」
「まぁそうなるかしらねぇ」
歌南はまるで他人事のようにさらりと言った。
独特のリズムも復活してる。
歌南にとって離婚は、彼女の中でそれほど一大事ではないらしい。
こいつらしい、っちゃらしいが。
ってか、ほんっと変わってねぇな。
ま、俺にとっても他人事だけど。
こいつが離婚しようが、しまいが俺には関係ない。
何故ならこいつとはもう無関係だから。
俺は無言で歌南に背を向けた。
俺は歌南に何を見ていたのだろうな。
こんな自分勝手な女に振り回されて、それでも一生懸命だったことが
馬鹿馬鹿しく思える。
歌南と別れて5年の月日が流れ、俺にも変化があった。
だけど歌南は昔のまま。
気持ちが冷めると、後はとことん冷静になれる。
「俺は―――お前のこと好きじゃない。それじゃぁな」