EGOISTE
昔は―――
“好き”の反対は“嫌い”だと思っていた。
俺の中では極端に二分割されていて、水月は好き、どっちかってぇと鬼頭と楠は嫌いの部類に入る。
“嫌い”って言うのは、相手のことを良い意味でも悪い意味でも少しだけ意識しているから。
でもそれすら無くなったら?
もうひたすらどうでもいいんだ。
つまり俺の中で存在すらしない。
―――そうやって無理やり消したいと思うのは
俺の願望。
「待ってよ!」
歌南の声が追いかけてきても俺は振り返らなかった。
振り返ったら終わりだ。
せっかく閉じ込めた気持ちがまた、溢れそうになる。
俺は気持ちを振り切る為に一歩前に出た。
「待ってって」
歌南の手が俺の腕を掴んで呼び止め、
不覚にも俺は振り向いてしまった。