EGOISTE
「何だよ……」
俺は不快感を露にした顔で歌南を睨みつけた。
そうでもしないと、流されそうだったから。
歌南はちょっとだけ苦笑すると、
「そんなにあたしのこと嫌?」
と珍しく、しおらしい表情を浮かべた。
「ああ、嫌だね」
流されてはだめだ。
また傷つくだけ。
「じゃ、これ飲んで。飲み干したら帰してあげるし、もう付き纏わないわ」
いつの間にオーダーしたのか、コトリ、とテーブルに置いたのは60ml程の小さなグラスだった。
ショットガン。
マジかよ……
俺は眉間に皺を寄せ、目を細めた。
「テキーラよ」
歌南はにっこり笑う。
悪意のない笑顔の下に、底意地の悪い性格が見え隠れしている。
「さすがのあんたでも無理でしょ?」
だからあたしと付き合って。
そう言われてる気がした。
俺は歌南を見据えて、
「飲み干したら本当に、お前とはおさらばだな」
と無表情に答えた。