EGOISTE
歌南がスツールに腰掛け、頬杖をついて俺を見上げる。
「嘘は言わないわ」
俺は小さくため息を吐くと、グラスの口にコースターを被せた。
ただでさえ胃がやられてるってのに、ここでこれを飲んだら俺マジでぶっ倒れるかもな。
でもまぁ、こんなんでこいつと縁が切れるのなら安いもんか。
俺は軽くグラスを持ち上げると、勢いをつけてグラスをテーブルに叩き付けた。
ガンっ!!
鈍い音がして、周りの客たちが何事か注目する。
ギャラリーの居る中で飲むのは、どうにも気が引けるが、俺は無表情にコースターを取り、泡状になったテキーラを一気に煽った。
ぐい
と液体を飲み込んで、同じだけの勢いで空になったグラスをテーブルに叩き付けた。
周りの客たちの驚きの声や、囃し立てる声、感嘆の声が入り混じって、俺の周りはちょっとした輪が出来ていた。
乱暴に口元を拭い、歌南を見下ろす。
「これで気が済んだか?」
歌南は何も言わずに俺をまっすぐに見つめている。
「じゃな。これでホントにさよならだ」
それだけ言い置いて、俺は今度こそその場を立ち去った。