EGOISTE

歌南がスツールに腰掛け、頬杖をついて俺を見上げる。


「嘘は言わないわ」


俺は小さくため息を吐くと、グラスの口にコースターを被せた。


ただでさえ胃がやられてるってのに、ここでこれを飲んだら俺マジでぶっ倒れるかもな。


でもまぁ、こんなんでこいつと縁が切れるのなら安いもんか。


俺は軽くグラスを持ち上げると、勢いをつけてグラスをテーブルに叩き付けた。





ガンっ!!





鈍い音がして、周りの客たちが何事か注目する。


ギャラリーの居る中で飲むのは、どうにも気が引けるが、俺は無表情にコースターを取り、泡状になったテキーラを一気に煽った。



ぐい



と液体を飲み込んで、同じだけの勢いで空になったグラスをテーブルに叩き付けた。


周りの客たちの驚きの声や、囃し立てる声、感嘆の声が入り混じって、俺の周りはちょっとした輪が出来ていた。


乱暴に口元を拭い、歌南を見下ろす。





「これで気が済んだか?」





歌南は何も言わずに俺をまっすぐに見つめている。


「じゃな。これでホントにさよならだ」


それだけ言い置いて、俺は今度こそその場を立ち去った。








< 208 / 355 >

この作品をシェア

pagetop