EGOISTE
水月のマンションに着くや否や、俺はトイレに直行した。
再び吐き出すと、ふらふらになった足取りでソファに寝転んだ。
事情を話すと
「ショットガン!?」
水月がくわっと目を開いた。まではいい……
「って何?」
「知らねぇのかよ…。あのリアクションは何よ」
水月は恥ずかしそうに笑った。
「何か名前からしてすごそう」
「テキーラ…ウォッカでも良いけど、そう言うアルコールをソーダ水で1:1の割合でショットグラスに注ぐ飲み方だよ。
グラスをテーブルとかに叩きつけて、アルコールとソーダが泡立って、その気泡を飲むことだ」
「うわっ。聞いただけで、悪酔いしそうだね」
水月はほんのちょっと顔を歪めた。
「実際、かなりキツい」
「何でそんなの飲んだのさ。どうせ姉さんの意地悪だろ?」
「…飲んだら付きまとうのは止めるって」
「…そんなの嘘だよ」
「……だよなぁ……」
俺は白い天井を見上げちょっと目を細めた。
「嘘と分かってて、何で言いなりなの?」
水月は俺の足元に浅く腰掛けると、眉を寄せて俺を見下ろしていた。
「言いなりってわけじゃねぇよ。ただ……負けたくなかった」
水月がちょっと笑う。
「相変わらず負けず嫌いだね」
「…うっせ。お前だって頑固だろ?」
「頑固と負けず嫌いは違うよ」
「い~や、違わない」
「まこは頑固の上に負けず嫌い」
「結構言うな…」
くすくすと、水月が小さく笑った。
思えば二人でこんな他愛のない話をしたのってどれぐらいぶりだろう。
学校で会えばそれなりに世間話をするし、用がありゃ電話もする。
でも、連れ立って遊ぶことが最近……とくに減った。
互いに恋人ができると、そんな風に疎遠になっていくのかな……