EGOISTE
くちづけ
俺は寝転んだままちょっと唇に指を当てた。
水月は……
俺と鬼頭がキスをしたことを知っているのかな。
鬼頭が…
水月に言うとは到底思えなかった。
事故だとしても、潔癖なあいつはそれが裏切りだと思っているに違いない。
知ったら水月はどうでるかな?
もう親友としてこの位置にはいられないかもしれない。
それともあっさりスルー……?
いや、たぶん前者だろうな。
親友だからこそ―――たとえ事故でもきっと許せないだろう。
水月はソファから立ち上がると、部屋の明りを消した。
足元のダウンライトだけをつけて、ゆずを寝室に追いやる。
「…?どうしたんだ?」
「疲れてるでしょ?少し寝ていきなよ。姉さんには帰ってくるなって伝えてあるから」
苦笑しながら寝室の扉を閉め俺にブランケットを被せると、水月はソファの下…俺の足元ら辺にゆっくりと座った。
「………まこ…また調子悪いみたいだね」
いつの間に持ってきたのか、水月はミネラルウォーターのペットボトルに口を付け何気なく切り出した。
「…調子悪いって?」
「胃炎か、胃潰瘍患ってるんじゃないか…って」
俺はちょっと驚いた。
こいつの前でそんな素振り見せなかったのに。
「分かるよ」
水月は苦笑した。
いや、後ろを向いているからはっきりと表情は見えないけれど、確かに苦い笑みを漏らしているが分かった。
こいつが
責任なんて感じることないのに……
こいつは俺以上に
苦しそうだった。
それをごまかす為に無理やり笑っていた―――
俺はそんな風に笑ってほしくないのに……
それでも水月の笑顔はどこかほっとするんだ。