EGOISTE
――ドウシテ泣イテルノカ……
そんなん俺だって知らねぇよ。
俺の方が聞きてぇよ。
どうしてこんなにも哀しいのか……
どうして頬を伝う水滴はこんなにも熱いのか……
「まこ……」
水月の手が優しく俺の頬を滑る。
温かい手のひらだった。
何でだろう…
楽しくも何ともないのに俺はふっと笑った。
冷笑とも言える冷たいものだ。
「…なんで……殴らないんだよ…。何で抵抗しない…。お前が本気出したら俺なんて簡単だろう?」
水月は茶色い大きな目を開いて俺を見てきた。
こいつの透き通るような瞳のガラス球に俺の姿が醜く歪んで映っている。
ズキンズキンと胃の痛みがせりあがってきた。
俺を咎めているのか
俺を哀れんでいるのか―――
「何で…お前はいつも俺に優しいんだよ」
そう、こいつは優しいんだ。
歌南にない、鬼頭にない、楠にない……優しさを持っている。
俺は同じ要素で出来ている人間をもう一人知っている。
―――千夏だ。