EGOISTE
鬼頭の声は明らかに不機嫌だった。
悪かったな!電話に出たのが水月じゃなく、俺で。
だけど今言い合ってる暇はない。
「鬼頭、ここに来るのなら悪いけどアンモニア水を買ってきてくれ」
『はぁ?アンモニア?って毒物じゃないの??』
よくご存知で。
さすがは秀才だな。
まぁ試薬に使う純度の高いアンモニアは通常毒物指定だ。
『あたしに病院や学校を襲えって言ってるの?』
「純度の低いもんだったら普通にドラッグストアに売ってるんだよ。いいから買って来い」
『…何に使うの?』
鬼頭が疑いの籠った低い声で聞いてきた。
眠ったままの水月をちらりと見ると俺は額に手をやった。
「気付け薬だよ」
俺の言葉に鬼頭は何も聞かずに
『分かった』
と素直に返事を返してきた。