EGOISTE
ゆっくりとした俺の言葉を水月は、まばたきもせずに一言一句聞き逃さないようにしっかりと受け止めたようだ。
水月はちょっと唇の端を持ち上げると、
「……知ってたよ」と小さく頷いた。
え―――?
「知って……じゃ、何で……」
俺の考え違いか?
こいつなら絶対怒り出すか、哀しむかのどっちかだと思ってたけど。
それともこいつは俺が考えるよりずっと大人で「ただの事故」として処理したのか?
そう言えば、こいつは昔から仏のようなところがあった。
全て悟って、何事にも寛容な心で接している部分があった。
でも鬼頭と出会って、こいつは変わった。
鬼頭のことになると俺がびっくりするほどつまらないことで怒り出したり、悩んだり……
当たり前の人間が躓く事柄にしょっちゅう足をぶつけているようだった。
転びそうになるところを、俺は何とか支えてきた…
少なくともそのつもり。
「僕にとって雅は大切だよ。でもまこも同じぐらい大切なんだ。どっちが大切か?なんて比べる対象じゃない。
だから僕はどっちも攻められない。
どっちも大好きなんだ。よくばりかな?」