EGOISTE
「ごめんなさいね、おじいちゃんが変なこと言って」
恥ずかしそうに、ミヤコ嬢が頭を下げる。
「いえ。楽しいですよ」
半分は本当の気持ちだ。将棋だって強いし。
「先生は…入院されてるんですか?どこかお悪いんですか?」
「えっと俺は……」
と言いかけて、
「悪いのは頭なんですぅ♪」
と小憎らしい聞き慣れた声がして、俺とミヤコ嬢は揃って入り口に目を向けた。
「鬼頭!てめっ!!」
鬼頭は俺の睨みにもビビッた様子がなく、飄々と入り口に背をもたれさせていた。
「何よ。せっかくお見舞いに来てやったのに」
「頼んでねぇ!」
俺の凄みにも鬼頭はめげる様子もなくつかつかと歩み寄ってきた。
「あの……妹……さん?」
ミヤコ嬢が鬼頭を見て、不思議そうに首を捻っている。
「「誰が」」
俺と鬼頭の声が重なって、ミヤコ嬢が目をぱちくりさせた。