EGOISTE


「じじくさいとは何だ!」


「これ…やりかけじゃん」


「まぁ…途中で対戦相手が検査で呼ばれていったんだよ」


「あ、そ」


鬼頭は短く答えると、俺の横から俺側の将棋の駒の一つ“飛車”をすっと指で動かした。







「王手」






短く言うと、俺の隣に腰を降ろしす。


俺は鬼頭と将棋盤の間で視線を行ったりきたり。


そうか。その手があったか……


「って言うか鬼頭、お前すげぇな。じじくさいとか言っても将棋のルールちゃんと知ってるじゃねぇか」


「はぁ?将棋なんてやったことないよ」


俺の言葉に鬼頭はあからさまに顔を歪めた。


「…じゃ、何で?」


「チェスならやったことあるもん。一緒のことでしょ?」


……なるほど、チェスか。


嫌味な高校生だぜ。




「でも…やっぱお前すげぇな。こんな手を思いつくなんて」


俺が散々悩んでも分からなかったことを、鬼頭は意図も簡単にこなした。




「先生は守備が固過ぎるんだよ。


あたしなら最初から攻めるね」





そうだろうな。お前の性格からしたら……





守備が固すぎる―――かぁ










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