EGOISTE
俺は昔からディフェンスが得意だったわけじゃない。
どっちかって言うとガンガンオフェンス側だった。
攻めてなんぼのもんでしょ?
いつからだったかな。
こんな風に守りに入るようになったのは……
鬼頭の差した手は
俺にまだ攻める道があることを教えていた。
だけど俺にはその道が分からない。
そんなことを思いながら将棋盤を片付け、ベッドに横になった。
鬼頭は俺に背を向け、折りたたみのパイプ椅子に腰掛けながらテーブルで何かを書いている。
見舞いに来たんじゃねぇのかよ。
「先生が暇だと思ったから、あたしがついててあげる」
そんなことを言いながらも、自分のことをしている。
ホント……マイペースな女。
まぁ俺としても気を遣われるのは好きじゃないから、勝手にやらしてもらうけど。
上体を上げて、俺は水月が置いていった車の雑誌を気のない素振りで捲った。
「ねぇ先生」
ふいに鬼頭がペンを休めて、俺に問いかけた。
こちらを振り向かない。
だから何を考えているのか分からない。まぁこいつの顔見たところで、何を考えているのかなんて読めやしないけど。
「何だよ」
「あたしね……水月に言ったよ……
先生とキスしたこと……」